食事、洗面、歯磨きのときに顔の片側に激しい痛みが走ることがあります。多くの場合は顔の感覚を司る三叉神経を脳の血管が圧迫していることが原因です。これは三叉神経痛といわれ、薬の服用でいったんは収まりますが、その後多くは再燃し、手術、ガンマナイフ、ブロック治療などの治療が必要になってきます。歴史的に見て、以前の手術は再発が多いものでした。主な原因は圧迫血管と三叉神経の間に柔らかい「詰め物」をして、直接の圧迫をなくす方法でしたが、数年後に柔らかい「詰め物」が固くなり、圧迫血管の拍動が直接届くようになり、元通りになってしまうためでした。現在の手術は圧迫血管を立体的にはずし、2度と神経に当たらないようにする方法がとられてから、治療成績は向上し再発も著しく減少しています。そのために、まずは薬のコントロールがうまくいかないときは、第一選択は手術(神経減荷術)でしょう。ただ、高齢、内科的な問題により手術が難しい患者さんには、ガンマナイフ治療、ブロック治療も選択肢と考えていいでしょう。まれに三叉神経を脳腫瘍が圧迫して、痛みを誘発することがあります。まずMRIによる画像診断は必須です。腫瘍の種類と大きさにより治療方針は異なってきます。中村記念病院時代でのガンマナイフによる250名余の治療経験から、お一人お一人に最適な治療方針を提示させていただきます。
片側の顔面がピクピクする症状は、眼のみならず、ほほ、口角が引っ張られるように不随意に動き、特に緊張などで強くなります。例えば、営業の方で、取引先との大事な商談があり、同僚とその会社に向かっているときに、顔面のぴくつきが次第に緊張で強くなり、面談の時には止まらなくなり、商談どころではなくなってしまうことがあります。薬はある程度は効きますが、限定的です。この顔面けいれんの原因は三叉神経痛と同じく、顔面神経への脳の血管の圧迫です。治療としては脳の血管の圧迫を外してあげる神経減荷術がおすすめです。一方で瞼のぴくつきのみの場合は、多くは、上眼瞼または下眼瞼のいずれかで、眼瞼けいれんであり、顔面けいれんと区別して考えてください。多くの症状は様子見ていただくうちに消失してゆきます。